フレデリック・フォーサイスといえば、「ジャッカルの日」「悪魔の選択」のような冷戦期の重厚なスパイもの長編のイメージが強いですが、短篇集もいくつか出版しています。

本書「帝王」もその1冊。短編なので世界の危機のような大掛かりな話ではないものの、完成度の高い作品が8篇収録されています。

表題作「帝王」は、50歳のうだつの上がらない中年主人公が、初めての海外旅行で訪れたモーリシャスでのトローリングで文字通り人生が一変する物語。きちんと役割を与えれらた人物配置、臨場感のある海の描写、最後のオチまで、職人の筆が冴えた一編です。