「ミイラ医師シヌヘ」ミカ・ワリタリ/木原悦子訳

古代エジプト王国の首都テーベに医者の息子に生まれたシヌヘの、波乱万丈の物語です。

医者を目指して医術を学ぶも、女に騙され一文無しになったシヌヘは、エジプトを離れ、バビロン、シリア、クレタと運命に導かれるように旅し、先々で様々なトラブルに巻き込まれます。エジプトの諺に「ナイルの水を一度飲んだものはナイルに帰る」というのがあるそうですが(後書より)、果たしてシヌヘはもう一度テーベに戻ることができるのか。

著者のミルカ・ワリタリはフィンランド人で、史実を踏まえつつもフィクションとして描かれています。かつ、本書は「エジプト人」という長編作品の英語版からの抄訳だそうで、テレビシリーズのドラマを再編集した映画版のような位置づけ。

フィクションとはいえ、歴史小説なのを踏まえてかキーワードには注釈がページ脇にある親切設計。章末や巻末にあると行き来が煩雑なんですよね。